今回もまた1型糖尿病話。興味ない方ごめんなさい。興味ある方も写真が少ないので頑張って読んでください。
6月24日から28日にかけ、アメリカ西海岸のサンディエゴで、アメリカ糖尿病学会(ADA)の年次総会が開かれました。欧州糖尿病学会(EASD)と並んで世界で最も権威ある学術団体の総会で、世界中の熱い注目が集まる中、続々と新しい研究成果が発表され、その速報が連日メールで世界中を飛び交います。いわば糖尿病界のこの1年を総括するお祭りウイークです。私も、今や大学を離れ、地域の基幹病院も離れた身としては、いつも糖尿病の最新情報に飢えているので、この1週間は太平洋の向こう側の港町に思いをはせながらPCにかじりついていました。
サンディエゴは太平洋に面した、米軍基地で栄える美しい近代都市です
日本人的に一番気になっていたのは、日本の製薬会社が開発した「アクトス」およびアクトスを含む合剤である「メタクト」、「ソニアス」という2型糖尿病治療薬を長年内服していると、膀胱癌の発生リスクがわずかに上昇する可能性がある、というフランス発のニュースの続報だったのですが、結局”慎重な判断を要する”位のはっきりしない声明で終わってしまいました。この件については一言では書き尽くせないので、「2型糖尿病」のカテゴリで後日改めて記事を書く予定です。ひとまず製薬メーカーからの情報はこちらで。⇒http://www.takeda.co.jp/pdf/usr/default/press/actos06.pdf
ということで、前置きが長くなりました。当たり前のことではありますが、
「医学の進歩によって1型糖尿病患者さんの寿命はグングン延びてるんだぞ」
というお話しです。
Pittsuburgh Epidemiology of Diabetes Complications study(ピッツバーグ糖尿病合併症疫学調査とでも訳しましょうか)からの報告。米国で1950年から1964年の間に1型糖尿病と診断された人の平均寿命はたった53.4歳だったのに対し、1965年から1980年の間に診断された人の平均寿命は68.8歳と一気に伸びた。一方対照となる一般人の平均寿命は72.4歳であった。
※英語の得意な方は情報元からどうぞ。⇒http://www.consumer.healthday.com/Article.asp?AID=654304
一般米国人の寿命の短かさも気になりますが(いろいろややこしい国なんです)、発症30年目以上のベテラン患者さんたちの寿命が、既に一般人と比べてほとんど遜色ない位まで改善してるんですね。30年前と言えば、まだ血糖自己測定器は馬鹿でかくて測定にやたら手間がかかって、採血も「ギロチン」と言われた見るからに痛そうで本当に飛び上がるほど痛いやつだったし、ペン型注射器もなく、バイアルからいわゆる注射器(シリンジってやつ)でインスリンを吸って、今よりずっと太い針でうっていました。超速効型インスリン(ヒューマログ、ノボラピッド、アピドラのこと。発売日順です)や持効型インスリン(ランタス、レベミルのこと。発売日順)もなくて、1型糖尿病の人も「30R1日2回法」とかやってた頃です。当然インスリンポンプもなかった。1型糖尿病(当時はⅠ型糖尿病、その後IDDMと呼ばれた時期もありましたが)は、とにかくお先真っ暗で悲惨な病気だったのです。
ところが今日では、採血は全然痛くないし、血糖測定も楽になり、インスリンの種類も増え、注射針は極細、CGMすれば1日を通した血糖の変動を知ることもできて、私が医者になってからのたった10年そこらの間だけをみても劇的に1型糖尿病の治療を取り巻く環境は良くなっています。ある種の薬を内服すれば合併症の進行が遅らせられることも分かってきたし、血圧やコレステロール値の管理の重要性も分かってきました。合併症自体の治療も進んできてて、治るとまでは言わずとも進行を食い止める、あるいは治療の負担の少ない生活を送れるようになってきてます。
更に将来のことまで言い出したら・・・・・
・現在の持効型インスリンより更に作用が安定した超持続型インスリン。既に治験が進んでます。
・CGMsとインスリンポンプを連動させた人工膵臓。海外では治験が進行中です。開発は時間の問題でしょう。いわゆるデバイス・ラグのせいでく日本への導入はすごく遅れるでしょうが。
・膵島移植。いろいろ困難が多いですが、再生医療で自分の細胞からインスリンを分泌させる組織(ランゲルハンス島)を作って自分に移植しなおせば、1型糖尿病はついに完治!
・そして私はおまんまの食い上げ!
近い将来そんな日が来ることを夢見ながら、1型糖尿病の患者さんたちには毎日の血糖コントロールに励んでいただきたいと思います。それまでに取り返しのつかない合併症を育ててしまったらもったいないですからね。
私の師匠であるH先生のお言葉が印象的です。「昔は(小児糖尿病)サマーキャンプに行くと、子どもたちの将来を考えて暗〜い気分になったもんだよ。でも今の子どもたちは本当に明るいね。だって普通の子どもたちだもん」
いえいえ、みんな普通どころか、1型糖尿病になったからこそ送れる人生を送ってますよ。
最後に、患者さん向けの講演でいつも申し上げてる結びの言葉。
お後がよろしいようで。

Author:Natchy
「ソレイユ千種クリニック」院長。
名古屋のど真ん中、名古屋市千種区の西の端、イオン千種の北裏にあります。
内科医は「あなたの街の何でも屋」なので、風邪から腰痛、健診、予防接種まで原則として何でも診察しておりますが、ライフワークとして特に小児〜青年期の1型糖尿病の治療に熱い情熱を注ぎ、クリニックの外では1型糖尿病患者会活動とカーボカウント普及活動を行っています。
クリニックについては、右記リンク集からホームページをご覧下さい。このブログでは、1型糖尿病に関する基本知識や最新情報を中心に、クリニックの紹介、糖尿病に関する最新情報、それに対する私の考え、様々な病気や健康に関する情報、全く個人的な趣味、家族のことまで、徒然なるままに書きつくっていこうと思います。燃え尽きないようにゆっくりやっていきますので、末永くお付き合いください。
急に更新が止まっても、気長にお待ちくださいね。
この記事に対するコメント:
ありがとうございます。
院長先生の、アツイお志をとてもありがたく思います。
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いろいろと勉強になります♪
Re: ありがとうございます。
「my」さん、いつもコメントありがとうございます。一言でもいいのでコメントをいただけると、書く方も随分頑張り甲斐を感じます。これからもよろしくお願いいたします。
「〇〇」さん、コメントありがとうございます。いろいろ悩みは尽きないようですが、続きはメールでお返事させていただきます。
Re: タイトルなし
「いとけん」さん、コメントありがとうございます。
サクラの人にはもっと長くて頻回のコメントを期待いたします。
お待ちしております。
那智先生とお話させていただくと、いつも元気が出ます。今回の書き込みでも、元気をいただきました。お忙しい方なので、余り無理はなさらないでください。那智先生が倒れられると、私の他にも、困る人は一杯います。でもブログの更新は、楽しみにしています。
Re: タイトルなし
「IDDM歴25年」さん、コメントありがとうございます。エバーグリーンの誰かさんですね。全然外れてるかな。当院の患者さんじゃなさそうだし。また気が向いたら名乗ってください。内緒のままでもいいけど。それもネットの楽しみ方ですから。
感動しました
いつも私達1型患者の立場でお話をしてくださる那智先生は、私達の希望の光です。またお話できる機会を楽しみにしています。先生もお体とご家庭をお大事に。
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「〇〇」さん、お返事はメールにていたしますね。コメントありがとうございました。
IDDM の友人にこのブログを教えてもらいました。本当に元気の出る内容でした。ありがとうございます。名古屋は遠くて転院はできないので、せめてブログを読ませていただいて先生の病院にかかっている気分にならせていただきます。
Re: 感動しました
「さわちん」さん、コメントありがとうございます。文面からは、お会いしたことのある方ですね。「患者さんの立場で話をする」と言っても、所詮はエバーグリーンの友人たちやつぼみの会の子どもたちをはじめ、患者さんたちから学ばせていただいたことばかりです。これからも勉強させてください。何かの機会でお会いした際には、よろしくお願いします。
Re: タイトルなし
「おいやんぐ」さん、コメントありがとうございます。こういうブログなんかで治療のテクニックを紹介すると、患者さんは耳触りのいいところだけを都合よく解釈してしまって、結局コントロールを乱してしまうことも多々あります。治療には常に責任を伴うので、今かかっていらっしゃる主治医の先生としっかりコミュニケーションをとって、間違いのない、ぶれのない、一貫性のある治療を続けてください。
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先生のブログで元気をいただきました。IDDM患者を代表してお礼申し上げます。これからも楽しみにしています。
Re: タイトルなし
匿名希望さん、コメントありがとうございます。お返事はメールにさせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
Re: タイトルなし
「Y」さん、ブログ訪問ならびにコメントありがとうございます。1型、いやIDDMの方に元気を出していただくことが、何よりも私の元気の元です。これからもますます元気にお過ごしください。
> 先生のブログで元気をいただきました。IDDM患者を代表してお礼申し上げます。これからも楽しみにしています。
熱い熱い那智先生こんにちは。最近更新少ないですね。googleで「1型糖尿病 寿命」で検索してごらん、ってIDDM仲間に伝えて回ってます。読んだら、みんな元気が出るって喜んでますよ。教えた俺の方が感謝されてます。相変わらず先生忙しいと思うけど、早く次の記事が読みたいってみんな待ってますからね。
Re: タイトルなし
「IDDM歴25年」さん、毎度コメントありがとうございます。更に、当ブログの宣伝までしてくださってありがとうございます。目の肥えた1型糖尿病の方たちにとっては、まだまだ情報量が貧弱だと思いますが、何とか細々と続けていこうと思っています。次の記事も用意はしてあるんですが、最後の仕上げをする時間がなかなかなくてアップできていない状況です。でも近日中には公開できるはずですので、今しばらくお待ちください。
> 熱い熱い那智先生こんにちは。最近更新少ないですね。googleで「1型糖尿病 寿命」で検索してごらん、ってIDDM仲間に伝えて回ってます。読んだら、みんな元気が出るって喜んでますよ。教えた俺の方が感謝されてます。相変わらず先生忙しいと思うけど、早く次の記事が読みたいってみんな待ってますからね。